自己調整学習とは?

「自己調整学習」は,1990年代からアメリカの教育心理学者,バリー・ジマーマン(Barry Zimmerman)らが中心となって提案している新しい教育心理学の理論体系です。

自己調整学習理論のもとでは,勉強ができるようになるか,というのは生まれつきの「頭の良さ」や「教育環境」によって決まるのではなく,学習者自身が自分の持っている能力を発揮するために自発的に行なうプロセスによって大きな影響をうける,と考えます。

つまり,「お父さんが有名大学を出ているから」あるいは「スパルタで有名な塾に行っているから」勉強ができるようになるかというとそうではなく,その学習者自身がどのように主体的に学習に取り組むかということがキーになるのです。

ジマーマンたちは,そのような主体的な取り組みをする学習者を「優れた自己調整学習者」と呼び,「未熟な学習者」との違いに着目しました。具体的には,どのようなプロセスが学習者をより「自己調整的」にし学業の成功に導くのか,また,そうしたプロセスはどうやって指導することができるか,を検討するようになりました。

このように,学習者自身の主体的で自立的な取り組みを学習のキーとして捉え,その実態や指導案を明らかにしようとするのが「自己調整学習」の理論です。

そのため,背景としている心理学的理論には多様なものが含まれています。たとえば,オペラント理論の立場から,学習者の自己調整を高める強化子を検討するという研究もありますし,現象学的に「自己」という観点から自己調整機能がどのように促進されるかを検討する研究もあります。このように様々な理論体系を「学習における自己調整」というキーワードのもとに横断する点に自己調整学習の面白さがあると言えるかもしれません。

自己調整学習研究会は,自己調整学習の観点に立ち,小学生から大学生の学習のあり方や指導方法について研究を行なっている研究者や実践家の集まりです。学習者自身の主体的で自立的な取り組みをいかに育てるか,興味をお持ちの方のご参加を歓迎いたします!

北大路書房からはたくさんの関連書が出版されています。書籍の紹介はこちらからご覧いただけます。

また,ベネッセの研究誌BIRDに,研究会メンバーの伊藤崇達さんが解説を書いています。大変分りやすい解説ですので,ご一読ください。こちらからご覧いただけます。